内科リウマチ科 福間クリニック

膠原病とは

  1. 膠原病とは
  2. 膠原病の特徴
  3. 膠原病の治療
  4. 膠原病の基礎治療
  5. 膠原病の薬物療法
  6. 膠原病の対症療法

膠原病とは

「膠原病はどんな病気か」についてはあまりよく理解されていません。膠原病がよく分からない理由は幾つかあります。
ひとつはまれな疾患であることから、周囲に同じ病気の人が少なく、知識を得る機会が少ないからです。
また、専門医や専門病院が少ないことも原因となっています。
第2に特定の臓器に限定されない全身病であるという点です。例えば肺炎は肺の感染症であり、胃潰瘍は胃の粘膜がただれて穴があいてしまう病気です。このように、多くの病気の病変は特定の臓器に限定されるので理解しやすいのですが、膠原病は複数の臓器が傷害されてしまうため、非常に多彩な症状を示し、同じ病気であっても、症状の出方が異なるのです。
膠原病とはどんな病気であるかを示すはっきりとした医学的な定義がありません。
膠原病は共通した特徴を持つ幾つかの疾患の集団です。1942年、クレンペラーが初めて膠原病の概念を提唱しました。
現在、一般的には、
免疫反応の異常(自己免疫)によって、全身に慢性の炎症性の病変が起こる一群の病気と考えられています
この中に、全身性エリテマトーデス(SLE)、強皮症(SScまたはPSS),関節リウマチ(RA)、リウマチ熱、多発性筋炎・皮膚筋炎(PM/DM)、結節性多発脈炎などが含まれます。これら6つの病気を古典的膠原病と呼びます。
その後、混合性結合組織病(MCTD)やシェーグレン症候群(SJS)なども膠原病に含まれるようになってきました。
また、ベーチェット病など膠原病とよく似た性質をもつ病気は膠原病類縁疾患と呼ばれています。
これらをあわせて、広汎性結合織病と呼ぶこともあります。
図1に広汎性結合織病と膠原病との関係を示し、表1に膠原病と膠原病類縁疾患を列挙しました。
膠原病で最も多く見られる疾患は慢性関節リウマチで、人口300人に1人くらい患者さんがいるといわれています。
全身性エリテマトーデスは人口10万人に50人くらい、強皮症や多発性筋炎は3分の1位います。
シェーグレン症候群は10年前の調査では日本に17000人の患者さんがいるといわれていましたが、実際はもっと多く、その数倍と考えられています。

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膠原病の特徴

表2に膠原病に共通した特徴を示します。このような特徴をもった疾患をとりあえず膠原病の仲間と考えています。いかにこれらの特徴について説明します。
(1)血管や結合組織を中心に侵す炎症性疾患
病変部位の組織を顕微鏡で調べてみると、血管の壁を中心として細胞と細胞の間の組織(間質、結合組織)にフィブリノイド変性と呼ばれる赤く染まる塊と血液細胞が集まってきている像(炎症反応)がいろいろな膠原病に共通して認められます。
血管が傷害されると血流が途絶し、組織障害が起こります(血管炎)。また、病変に集まった細胞は直接に、または有害な物質をだしたりして周囲の組織を侵していきます。
これらの現象は自己免疫反応によるものといわれています。

(2)多臓器に起こる障害
血管や結合組織は身体のすべての臓器に存在しています。
従って、膠原病では心臓や肺、腎臓などの内臓、皮膚や関節、筋肉、神経など全身に障害が起こり得ます。
ただし、膠原病になれば誰にも身体中の臓器がおかされるというわけではありません。膠原病の種類により傷害されやすい臓器があり、また、同じ膠原病に罹った人でも、症状の出方に個人差があります。例えば、同じ全身性エリテマトーデスでも腎障害のみ出る人、紅斑のみに出る人など多様です。

(3)遺伝素因、性差がある
膠原病の原因はまだよくわかってません。
膠原病に関係のありそうな遺伝子は幾つか見つかっています。
膠原病の患者さんが多く見かける家系はあるようですが、しかし、実際には血縁に膠原病の人がいても遺伝についてはさほど心配する必要はありません。
例えば、親が全身性エリテマトーデスや関節リウマチにかかっている場合、子供も同じ病気にかかる確立は10%に満たないとされています。家族内発症がほとんどない膠原病もあります。
膠原病の原因となる遺伝子を持っていても必ず発症するわけではなく、発病には何らかの誘因が必要と言われています。誘因としては、ストレス、ウィルスなどの感染症、性ホルモンの影響などがあります。
これらが引き金となり、原因遺伝子が活性化されて、免疫反応の異常が起こり、自己免疫、炎症、組織障害にいたる一連の連鎖反応が起こって発病するとされています。(図2)
膠原病は結節性多発動脈炎とベーチェット病を除き、女性に多い傾向があります。
また、妊娠可能な年齢の女性に多く発症します。
これは女性ホルモンは免疫反応を高める作用があることから、女性ホルモンの影響が考えられています。

(4)免疫学的異常が関与している
細菌やウィルスが身体の中に侵入してくると、身体は病気にならないよう、または病気が早く治るようにこれらの病原体(異物)を退治しようとします。
この反応を免疫反応と呼びます。免疫反応ではリンパ球や好中球といった白血球(細胞性免疫)や抗体やサイトカインと呼ばれるタンパク質(液性免疫)などがその役割をになっています。
膠原病では、こうした免疫反応の調節に異常が起こり、免疫反応により自分の身体を壊すようになっていると考えられます(自己免疫反応)。
例えば、全身性エリテマトーデスでは自己の身体を構成する成分と反応する抗体(自己抗体)が腎臓や皮膚に沈着して腎炎や紅斑をおこします。

(5)寛解・増悪を繰り返し、慢性の経過をとる
膠原病は原因不明の疾患で、根本的治療がないことから難病とされていますが、実際は一部の病気(結節性多発動脈炎など)を除き慢性の経過をとります。
全身性エリテマトーデスや多発性筋炎・皮膚筋炎の発症は比較的に急性の経過をとりますが、治療にて軽快すると、最少量の薬(維持量)が継続して投与されます。強皮症やシェーグレン症候群は急性増悪することは少なく慢性に経過します。

(6)膠原病相互に共通の症状がある
膠原病は全身病ですので、発熱や体重減少、貧血、リンパ節腫脹などの全身症状は共通してみられます。
血管の障害として、レイノー現象(寒冷刺激や緊張などにより指先が白くなる)はいずれの膠原病でも共通して現れます。
その他に共通してよくみられる症状は表3に示しました。
また、それぞれの膠原病に特徴的な症状があり、それぞれの膠原病の診断に重要です。

(7)異なる膠原病の合併や移行を認める
同じ人に2つ以上の膠原病が合併して発症することがあります。
特に、シェーグレン症候群の患者さんの半分は他の膠原病に併発するといわれています。
また、慢性関節リウマチの10−20%にシェーグレン症候群の症状がでます。全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎は合併して発病することがあります。また、ある膠原病が時間が経過すると他の膠原病に変わってしまうことがあります。
例えば多発性筋炎と診断され治療を受けていたのに、数年後、強皮症に変わってしまうこともあります。
こうしたことから、それぞれの膠原病の病因に共通点があるものと想像されています。

(8)ステロイド剤や免疫抑制剤が奏功する
膠原病の病因は免疫反応の調節異常であることから、治療は免疫反応を抑えることが中心となっています。
多くの膠原病の治療にステロイド剤と免疫抑制剤が使われています。
いずれも強く免疫反応を抑えますが、しかし、これらは正常な組織にも影響するので、副作用が問題になります。
これらの薬は安易に使用するのではなく、適切量を適切な期間、慎重に使う必要があります。細菌、新しいステロイド剤や免疫抑制剤などの開発や使用法の工夫がなされ、膠原病の予後は昔に比べ格段に改善されています。
病気の診断法や治療法が確立されていなかった30年前は、全身性エリテマトーデスの患者さんが発症して5年間生存する確率は60%と低いものでしたが、現在は90%以上となっています。

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膠原病の治療

膠原病の治療は主に基礎療法、薬物療法からなっています。
基礎療法は薬に頼らず病気をコントロールするために重要であり、家庭や時に入院して行うもので、膠原病増悪予防、食餌療法からリハビリまでのいろいろな方法があります。
薬物療法は、膠原病の治療の主体をなすもので、膠原病の免疫異常を是正する免疫療法(全身療法)と、膠原病で生じたいろいろな臓器障害や症状を治す対症療法があります。
さらに最近は血漿交換療法やリンパ球除去療法など新しい治療法が考案されています。
膠原病は単一の疾患ではなく、それぞれの特徴をもったいくつかの疾患(全身性エリテマトーデス)や慢性関節リウマチ、皮膚筋炎、強皮症、シェーグレン症候群)からなっており、それぞれの疾患によって薬物療法や日常生活の注意点は異なっています。
膠原病の治療は、この20年間で急速に進み、病気をコントロールできるようになってきました。
しかし、薬の副作用には重いものもあり、常に注意しておく必要があります。最近の統計では、全身性エリテマトーデスの方の死因は感染症など薬物療法の副作用が多くを占めるようになってきています。
副作用の発現を未然に防ぐため、皆さんも今受けている治療薬とその副作用についてよく知っておいてください。

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膠原病の基礎治療

基礎療法は目的別に分けると、4つの表に示したように、発病予防の注意、個々の症状増悪を防ぐための注意、臓器障害が実際にある時の注意、治療の副作用を未然に防ぐための注意などがあります。
病気が悪くなることを避けるためには、自分の病気が悪くなる誘因についてよく知っておく必要があります。
膠原病一般に、病気の誘因となるのは、ストレスや感染症、分娩などの性ホルモンの変動などがあります。個々の症状については、例えば、全身性エリテマトーデスなどにみられる蝶形紅斑は紫外線によって悪くなるので、日差しの強いところに出たりするとは帽子をかぶったり、長袖の服を着るなどの注意が必要です。
その他、臓器障害がある時には、主治医によく聞いてそれぞれの障害に応じた安静や食事療法を行ってください。
副腎皮質ホルモンを内服している人は、骨粗しょう症(骨のカルシウムがぬけてしまう)や肥満、糖尿病になりやすいので、カルシウムを多くとったり、食べ過ぎに気をつけなければなりません。
熱があるなど病気が活動性の時は安静をとるようにしてください。
場合によっては安静目的で入院することもあります。
入院療法の適応はに示してあります。

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膠原病の薬物療法

免疫療法 膠原病は免疫異常(自分で自分の身体を壊す反応)によって起こるといわれています。
免疫療法は、身体の中で免疫異常をおこしている細胞を抑制または是正しようという治療法です。
病因の原因に近い所で作用するので、病気全体の活動性を抑えることができます。これに用いられる薬には副腎皮質ホルモン剤、免疫抑制剤、免疫調整剤などがあります。
これらはいずれも強い副作用がでることがありので注意が必要です。

副腎皮質ホルモン剤:
身体の中の副腎と呼ばれる組織で作られるホルモンを合成して飲み薬にしたものです。
副腎皮質ホルモン剤と次に述べる免疫抑制剤は全ての膠原病に使われるわけではありません。
にしめしたように、結節性多発動脈炎などでは副腎皮質ホルモン剤が最初から多く使われますが、シェーグレン症候群や強皮症では病気のごく初期に少量使うか、内臓合併症のある時にしか使われません。
副腎皮質ホルモン剤は多様な作用を持っています(表)。 ホルモン作用は主に副作用として現れてきます。治療に効果のあるのは抗炎症作用と免疫抑制作用です。
抗炎症作用とは関節炎や紅斑などの炎症反応を抑える作用で、副腎皮質ホルモン剤を1錠から3錠くらいで十分な効果を得られます(図)
ですから、副腎皮質ホルモン剤(プレドニン、メドロール、リンデロンなど)3錠も内服すれば関節痛などはかなりよくなります。
しかし、免疫異常を治す免疫抑制作用は3錠以上の副腎皮質ホルモン剤を内服しないと期待できず、時には20錠/日以上内服したり、点滴で200錠分位を一度に使う(ステロイドパルス療法)こともあります。
全身性エリテマトーデスや皮膚筋炎などで大量に薬を使わなくてはいけないのはこのためです。
副腎皮質ホルモン剤の副作用には易感染症(細菌やウィルスに対する抵抗力がなくなる)、糖尿病、副腎皮質機能不全、胃潰瘍の増悪、精神症状、骨粗しょう症などの大副作用のほか、肥満、白内障、大腿骨頭無腐性壊死などがあります。
副腎皮質ホルモンの副作用は内服している薬の量に比例して増加、重症化します。
特に副腎皮質ホルモン剤6錠以上で急速に感染に対する抵抗力がなくなるので、入院が必要になってきます。
骨粗しょう症や副腎皮質機能不全などは薬の量に加え、内服している期間によっても危険性が増してきます。
長期間内服する場合は、骨粗しょう症を予防するため、ビタミンDを内服したり、カルシウム分を多く食べる様にする必要があります。最近は、アレンドロネート等(ボナロン、フォサマック、ベネット)などを使うと、食道や胃の副作用には注意が必要ですが、ステロイド骨粗鬆症であっても骨のカルシウムの量を増やすことができると言われています。
副腎皮質ホルモン剤を長く服用していると副腎からの生理的な副腎皮質ホルモンの分泌(通常1日にプレドニン0.75錠分位)が止まってしまいます。
副腎皮質ホルモン剤が十分に減量されていても回復するのに1年くらいかかります。
ですから、突然、副腎皮質ホルモン剤を中止してしまうと急性副腎皮質機能不全となってショックを起こしたりするので、一旦ステロイドを内服し始めたら、減量中止は主治医の指示に従って行いましょう。

免疫抑制剤:
免疫異常をおこしている細胞の増殖を抑えたり殺すことで作用します。
もともとは抗がん剤や臓器移植の拒絶反応を抑えるための薬として開発されたもので、免疫細胞だけではなく、増殖の早い細胞に作用するので、白血球減少や、不妊、奇形児出産、脱毛、発ガン、肝障害などいろいろな副作用が問題となります(表)
通常は、副腎皮質ホルモン剤が十分効果ない場合や、重篤な合併症があって治療を急ぐ時などに使われます。

免疫調整剤など:
その他、それぞれの膠原病に対していろいろな治療薬が試みられています。
D−ペニシラミンは免疫反応に対する効果のほか、皮膚硬化を柔らかくする作用があるので、強皮症に用いられています。
また、ベーチェット病に対しては、コルヒチンやサイクロスポリンが効果があるといわれています。

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膠原病の対症療法

対症療法は、病気全体を治す治療ではなく、個々の症状や臓器障害に対する治療です。
膠原病は多彩な症状を呈するため、全ての症状・臓器障害について述べることはできないので、ここでは膠原病に共通して現れやすい発熱や関節痛、紅斑、レイノー現象についてのみ述べます。

発熱:
に示した様に、膠原病は高熱を出す疾患と微熱または熱のでない疾患に分かれます。
高熱の治療は、基礎疾患(原因となった膠原病)の治療(全身治療)を優先しますが、苦痛な時や発熱で衰弱している場合は先ず解熱剤を使用します。しかし、高熱を出す疾患の多くは多少の副腎皮質ホルモン剤を必要とする傾向があるようです。
ただし、ベーチェット病に対しては、中止する時に増悪しやすいので、副腎皮質ホルモン剤はできるだけ使用しない方がいいといわれています。
微熱のみの場合は、基礎疾患の治療を行い、発熱自体には積極的治療はしません。
微熱しかでないはずの疾患で、高熱が出た場合は感染症など他の原因を疑ったほうがよいとされています。
また解熱剤を用いて熱を下げた場合、感染症の発熱も隠されて発見が遅れてしまうので注意が必要です。

関節痛:
やはり基礎疾患の治療が優先されます。
ただし、関節痛単独に対して副腎皮質ホルモン剤は使われません。
通常、消炎鎮痛剤の入った内服薬、坐薬、貼り薬、塗り薬が使われます。関節の腫れがある時は、その関節を安静にする必要があります

紅斑:
やはり基礎疾患の治療が優先されます。
紅斑のみに対して副腎皮質ホルモン剤の内服薬は使いませんが、ひどいときは副腎皮質ホルモン剤の塗り薬を使います。
塗り薬は身体に吸収されず、全身の副作用の出難いものもありますが、突然止めると紅斑が急に悪くなることもあります。
この場合、副腎皮質ホルモン剤の塗り薬を強いものから弱いものへ徐々に変えていき、最後に副腎皮質ホルモン剤の入っていない薬にすればよいです。

レイノー現象:
ほとんどの膠原病で見られます。
特に、強皮症や混合性結合組織病で発言頻度が高いとされています。
指などに行く細かい動脈が寒さや緊張といった誘因で痙攣を起こし、痙攣を起こした先の組織に血液が流れなくなり、皮膚の色が白くなる状態です(図)
指の他、耳や鼻、さらには舌や内臓の動脈などにも起こると言われています。
副腎皮質ホルモンは無効です。
レイノー現象の治療(3つの表)の第1は緊張や寒冷などの誘因を除くことです。
薬物療法としては血管を広げる血管拡張薬や血小板凝集抑制薬、漢方薬などが使われています。
時には、手術療法なども行われますが、比較的治療の難しい症状です。


最後に

いままでは、膠原病は不治の病、致死的な病ではなく、コントロール可能な慢性疾患と考えられています。
膠原病は慢性疾患であることから、長い間、膠原病とうまくつきあっていかなければなりません。
膠原病であることを悲観し、絶望して消極的な生活を送るのではいけません。
膠原病は直すことはできないけれども、コントロールできること、通常の日常生活を送っている人が大勢いることを知り、積極的に治療を受けていく必要があります。
このためには、病気について正しい知識を持ち、自分の病気の状態を把握し、また副作用も含め、治療についてもよく理解しておくことが必要です。
医療側と良好な信頼関係を持つことも必要です。また、同じ患者さん同士が交流し、情報交換するともよいかもしれません。静岡県には膠原病友の会静岡支部があります。興味のある方は下記に連絡してください。


全国膠原病友の会/東京都千代田区富士見2−4−9−203/TEL03−3288−0721
膠原病友の会静岡支部/浜名郡新居町新居1074畠山邦男方/TEL
053-594-1409

更新日 :2002/10/1